2020年12月08日

創作童話『雲ってどんな味?』

ず〜っと、ず〜っと、空の上。天使の子どもと天使のお母さんが、ふたりで暮らしていました。天使の子どもは、けん太君と言います。雲でできた小さなお家に住んでいました。

テーブルやイス、ベッドだって雲でできています。朝起きると雲で歯を磨いて、雲で顔を洗います。雲のイスに座って、雲のテーブルにのっている雲のパンを食べます。雲のミルクも飲みます。ちゃんとパンやミルクの味がして、とってもおいしいのです。

朝の食事が終わると、けん太君は公園に行って遊びます。すべり台やジャングルジム、ブランコにのったりします。ちょっとおなかがすいてきたら、雲をちぎって、パクッと食べてしまいます。公園の雲は、子どもたちのために、わた菓子の味になっています。どこを食べても甘くておいしいのです。でも、すべり台やブランコを食べると、もう遊べなくなるから、少しずつしか食べません。

いっぱい遊んだけん太君は、それから学校に行きます。雲の学校では、地球のことや宇宙のことを教えてくれます。雲の育て方なんていう、おもしろい勉強もあるから、けん太君は学校が大好きです。

ある日のこと、先生が世界の雲のことをお話ししてくれました。国によって、それぞれちがった形や味の雲があるそうです。寒い寒い南極の雲は、シャーベットみたいにこおっていて、食べると冷たくておいしいそうです。インドの雲は、カレーの味がすると言いました。

けん太君は、おいしそうな雲の話を聞いて、食べに行きたくなりました。公園のわた菓子もおいしいけれど、いろんな国の雲を食べてみたくなったのです。

お家に帰ってから、けん太君はお母さんにそのことを話しました。するとお母さんは、「食べていらっしゃいよ」と簡単に言いました。けん太君も大きくなったので、ちょっとぐらい冒険した方がいいとお母さんは思ったのです。

けん太君は、よろこんで出かけることにしました。雲のくるまを自分で運転して行きます。雲の世界では、子どもが運転したっていいのです。空は広いから、きけんなことはありません。もし、ぶつかっても、雲だからいたくないし、安全です。

けん太君が最初にやって来たのは、先生が話していた南極です。下をのぞくと、ペンギンたちがひょこひょこと遊んでいます。けん太くんは、さっそくおいしそうな雲を見つけると、パクッと口の中に入れました。シャーベットになっていて、とても甘いのです。でも、食べているうちに、ゾクゾクっと寒くなってきました。そりゃあ、南極の上ですから、当然です。

けん太くんは、すぐに他の国をめざしました。やって来たのはインドです。あたりは、おいしそうなカレーのにおいが広がっています。さっそくパクリッ。けん太くんはおいしいと言おうとしましたが、すぐにやめました。

お口の中がだんだん火事みたいになってきたのです。からくてからくて、とてもけん太君には食べることができません。はやくお口の火事を消さないと、やけどしてしまうと思ったので、くるまをちょっとだけちぎって食べました。すると、甘い味で火事はたちまち消えてしまいました。けん太君は、二度とインドの雲は食べないぞと思いました。

他の国の雲をつぎつぎに食べてみました。フランスの雲は、フランスパンの味。スイスは、チーズの味。イタリアは、ピザの味。ドイツでは、……けん太君は、よっぱらってしまいました。だって、ビールの味だったのですから。

けん太君は、顔を赤くしながら、今度は日本にやって来ました。どういうわけか、日本のことを前から知っているような気がしました。富士山のことや北海道のこと。温泉があったり、魚がいっぱいいること。頭の中にちゃんとしまってあるようでした。

不思議に思いながらも、雲を食べることは忘れませんでした。きっと魚の味がするから、おいしくないだろうと思っていましたが、ぜんぜんちがっていました。

おいしくないのは当たっていましたが、すごくにがくて、ザラザラしていて、よ〜く見ると、他の国の雲にくらべて白くないようです。においだってくさくて、せきが出てきます。

けん太君はどうしてかなと思って、雲の下をのぞいてみました。えんとつからは、黒いけむりがもくもくと流れています。くるまからも黒いけむりがはき出されています。このけむりが、雲をおいしくないようにしているみたいです。世界中の雲を食べたけれど、こんな雲ははじめてでした。でも、このにおいは知っているような気がしました。

世界の雲に満足したけん太君は、お母さんのいる南の雲にかえって来ました。いろんな雲のお話をすると、お母さんも食べたそうでした。

ところが、日本の話をはじめると、お母さんの顔がこわくなってきました。もう二度とあんなところに行ってはだめだとも言いました。その理由は、言ってくれません。

けん太君は、お母さんがあまりにこわく見えたから、むりに聞こうとはしませんでした。それに、あんなにおいしくない雲のところへは、もう行かないことにしたからです。

お母さんは、昔のことを思い出していました。日本に住んでいたこと。あのよごれた町のせいで、けん太君が天使になってしまったこと。けん太君をおいかけて、自分も天使になったこと。

お母さんの目には、ひとつぶのなみだがこぼれていました。でも、いまのけん太君はとてもしあわせそうなので、ふたつぶめのなみだは流しませんでした。

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2020年10月13日

創作童話『かいじゅうトカゲくん』

ママとのお買い物はつまらない。あっちこっち引っぱっていかれて、このお洋服ママに似合う? とか、この柄ハデじゃないかしら? って、まるで友だちと話しているみたいに聞いてくるの。私、娘なのに。

私も女の子だけど、そんなことにあまり興味がないの。だから、適当に答えているわ。どうして、そんなつまらないお買い物について来るかというと、後で、レストランに行って、好きなものを食べさせてくれるから。さっきからずっと、何を食べるか考えていたところよ。

やっとデパートを出て、町の大通りを歩いていた時、ビルとビルの間で、何か動くものが見えたの。ママの手をほどいて、駆け寄ったら、それはトカゲだったのよ。図鑑で見たことがあるの。とても小さくて、かわいいの。

向こうでママが呼んでるわ。でも、トカゲくんが気になるし。あわててつかまえて、そっと右のポケットに入れたの。歩いている間も、時々、逃げていないかを確かめるために、ポケットに手をつっこんで、指でトカゲくんの顔をなでてあげたりしてた。

レストランでは困ったわ。トカゲくんが出てこないように、右手はポケットに入れたまま。だから、左手でも食べられるように、チョコレートパフェにしたの。ママには、左手で食べる練習なのと言って、ごまかしたわ。

おうちに帰って、机の引き出しのものを全部出して、トカゲくんのお部屋にしたのよ。でも、トカゲって何を食べるか分からないから、私の好きなチーズをママにないしょで持ってきて、あげたわ。トカゲくんは美味しそうに食べたの。

毎日、チーズをあげてると、トカゲくんはどんどん大きくなっていくの。びっくりするほど、早いの。ちょっと頭だけが大きいけど、目がクリクリしていてかわいいから、クビに赤いリボンをつけてあげたの。そしたら、トカゲくんはクビをななめにして、不思議そうにしてたわ。何か分からなかったかしら。

2週間ぐらいしたら、もう引き出しには入らない大きさになってきたから、今度は私が小さい頃に使っていた、おもちゃ箱をお部屋にしたの。

でも、トカゲくんって、こんなに大きくなるのかな。小さくなったリボンも、大きくて長い物にかえてあげた。

こんなに大きくなると、おそうじする時にママに見つかっちゃうから、お部屋のおそうじは自分でするって、ママに言ったわ。たいへんだけど、しかたないもの。

1ヵ月ぐらいたったころになると、私の半分ぐらいの大きさになってた。この調子で大きくなると、おうちにいられなくなるかもしれない。動物園につれて行かなきゃいけないのかな。どうしようと、いつも考えてた。

でも、とてもかわいくて、私の顔をペロペロとなめてくるから、心配なんてすぐに忘れてしまうの。

大きくなったからだは、どう見てもトカゲじゃないみたい。テレビで出て来る、かいじゅうのようなの。ママに気づかれないように、静かに遊んでたわ。

ある夜、お庭の方で変な音が聞こえたの。動物の声みたいだった。ママもパパも気づいていないみたい。そっと窓からのぞいたら、すごく大きなかいじゅうがいたわ。まるで夢の世界だと思った。ほっぺをつねったら、痛かった。

こわかったけど、よ〜く見ると、おとぎ話や映画に出て来るドラゴンにそっくりだった。もっともっと見たら、うちにいるトカゲくんとも似ているの。そう思ってた時、いつのまにか横にトカゲくんがいたの。

そとのドラゴンがこっちを見て、とても悲しそうな声をあげたわ。そしたら、トカゲくんも声をあげたの。

やっとわかった。この子は、ドラゴンの子どもだったのよ。きっと、まいごになってたんだわ。お母さんが探しに来たんだ。

この子は、お母さんに返さなくちゃいけない。とってもさびしいけど、この子はまだ赤ちゃんみたいなもの。ぜったいにママが必要だわ。だから、私は決めたの。

お母さんに、トカゲくん、いいえドラゴンくんを渡してあげたら、しっかり抱きかかえて、泣いているようだったわ。

お母さんがドラゴンくんのクビに結んでいるリボンを見て、不思議そうにしていたので、いいことを思いついたの。お母さんにもリボンを結んであげたの。人間の大人より、ずっと大きかったので、結ぶのが大変だったけど。

お母さんがちょっと笑ったように見えた。私はさびしかったけど、うれしかった。お母さんとドラゴンくんは、明るくなりかけた空に飛び立っていった。

ドラゴンくんは、こちらを見て、大きな声でさよならを言っていた。言葉はわからないけど、そう感じたわ。私は、リボンの残りを持って、大きく手をふったわ。

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2020年09月27日

創作童話『おしりがおんなじ』

ぼくのおとうさんは、大きい。からだだけじゃなくて、かおも大きい。かおの中でもはながいちばん大きい。はなの穴もすごく大きい。

大きな穴には、ハリみたいに、さわったらいたそうな毛がいっぱいはえている。1本だけ、太くて長い毛がとび出しているのがおもしろい。

このままのびると、はなからかみの毛がはえているみたいになってしまうので、ちょっとしんぱいだ。

外を歩いたときに、ぼくのおとうさんを知っているともだちに見られたら、かっこわるいからだ。ぼくは、おとうさんに毛を切ってくれるようにおねがいしようと思う。

もうひとつ、おなかも大きい。ぼくは、がっこうの先生にきいてみた。男にも赤ちゃんができるのですか。先生はちょっとわらって、できないといった。だったら、あのおなかにはなにが入っているんだろう。

おとうさんにきいたら、ごはんがいっぱいつまってるといっていた。でも、ぼくはきっとうんちがつまっているんだと思う。だって、おとうさんはトイレに入ったら、なかなか出てこないから。

おかあさんにはおっぱいがある。おとうさんとぼくにはない。どうしてかとおかあさんにきいたら、おとなの女の人は、赤ちゃんにおちちをのませないといけないからだといった。

おかあさんはいつも、ぼくのいもうとにおちちをのませている。でも、こどものいない人もおっぱいがついているのはどうしてだろう。にんげんはむずかしいと思う。

ぼくは男だけど、おとうさんみたいに大きなところはない。いもうとは女だけど、おかあさんみたいにおっぱいはない。

でも、かぞくみんながおんなじところがある。それは、おしりだ。大きさはちがうけど、みんなおならをすることだ。口でもないのに、しゃべりだす。

おとうさんのおならは、「ブーブーブブー」とおこっているようだ。

おかあさんのおならは、いつも「スースー」とねているようだ。おかあさんに「おならをした」といったら、してませんよとしらんぷりをする。でも、ぼくはおしりのちかくで耳をすましているので、ぜったいにしていると思う。

いもうとのおならは、「プン」とすねているようだ。いもうともしらんぷりする。まだ赤ちゃんだから、わからないのかな。

ぼくのおならは、「プー」ときれいなおとがする。

ひとつだけ、わからないことがある。おとうさんは、ときどきぼくをよんで、あたまをつかまえておしりのところにもっていって、おならをする。くさくてしかたがないので、やめてほしい。

わからないところは、おとうさんはどうしておならが出るのがわかるのかということ。それとも、すきなときに出せるのかな。

ぼくのおならは、とつぜん出てくる。出ないようにしても、出てしまう。ぼくのいうことをきかない。おとなになったら、わかるようになるのかな。

ぼくのうちは、おならかぞくだ。ともだちや近くのいえの人にばれたらはずかしいので、このことはだれにもいわない。

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2020年08月28日

創作童話『新イソップのよくばりな犬』

人間の家に行ったら、食べるものをもらえる。犬は、それをよく知っていました。この町は、決してお金持ちじゃないけれど、動物を大切にする、心のやさしい人たちが住んでいます。

犬のすみかは、町とは反対側の、川をへだてた森の中。人に飼われていない、野犬なのです。昔は、どこかのお金持ちに飼われていた、とても美しい犬でした。でも、犬に飽きたお金持ちは、ゴミでも捨てるように、この犬を追い出しました。

あちらこちらの町を放浪し、やっとこの町にたどり着くまでには、何度も悲しい目にあいました。野良犬だと、子供たちに石を投げられたり、お腹が空いてゴミ箱をあさっていたら、家の中から出て来た男に蹴飛ばされたり、それはもう、つらいことばかりでした。

でも、この町の人たちはやさしくて、いつでも食べものをくれます。石を投げたり、けとばしたりすることもありません。

犬は、何不自由なく暮らしていました。けれど、昔のつらさから、ちょっとよくばりな犬になっていました。人から食べものをもらって、お腹がいっぱいなのに、また別の家に行って、食べものをもらうのです。食べものがなくなるという不安が、そうさせていたのです。

そんなことを続けていると、犬のからだは、はち切れんばかりに太っていきました。からだが重くて、歩くのもつらそうでした。

町の人たちは、犬の姿を見て、食べものをあげない方が犬のためだと思いはじめていました。それは、町の人たちのやさしさです。犬が食べものをもらいに来ると、やさしく言い聞かせるのでした。

あなたが太って動けなくなるといけないから、食べものはあげませんよ。もっとやせたら、うちへおいで。

よくばりになってしまっている犬は、食べたくてしかたがありません。町中を歩きまわって、やっとのことでお肉をもらいました。

やっともらったお肉だから、すみかでゆっくり食べようと、川向こうの森に向かいました。

橋をわたっている時、水にうつった自分の姿に気づいて、びっくりぎょうてん。あまりにもみにくく太っていたからです。昔、池で自分の姿を知った時とは、にてもにつかない姿になっていました。

犬は、びっくりした拍子に、くわえていたお肉を川に落としてしまいました。よくばりな犬は、自分の食べものといっしょに、昔の美しい姿もなくしてしまいました。

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2020年08月09日

創作童話『動物園はお休み』

今日動物園は、仮装パーティの日です。と言っても、お客さんは入れません。お休みなんです。動物たちのためのイベントです。

動物たちは、いっしょうけんめいに変装を考えました。園内のまんなかあたりにあるふんすいが、パーティの会場です。

時間が近づくと、思い思いの変装をした動物たちが集まって来ました。

パーティの司会は、チョウネクタイをしたペンギン君です。いいえ、よ〜く見ると、ペンギン君に変装したふくろう君です。どおりで少し太りぎみです。

「みなさん、今日はたくさん楽しみましょう。ディスコタイムもあります。園長さんからの差し入れも届いています。それから、最後には仮装コンテストもありますので、お楽しみに」。

パーティはにぎやかに始まりました。

ぞうさんのような大きな動物の上に、ねずみさんのような小さな動物がのって、おどっています。

カンガルーさんやうさぎさんのように、ピョンピョンはねる動物たちが、音楽に合わせて飛びまわっています。

木の上にいる動物たちは、枝をゆすって、リズムをとっています。

それはにぎやかで、楽しいディスコタイムです。園長さんの差し入れも、いつのまにかなくなっています。みんな大満足です。

さて、いよいよ仮装コンテストです。「それでは、一番の方からどうぞ」。

ヒョコヒョコと、ゆっくり歩いて来たのは……。両手は白い羽根になっていて、ふんすいのように上を向いている、白いおっぽもあります。頭には、赤くて長いコックさんのような帽子をかぶっています。どうやら、にわとりさんに変装していますね。いったい、誰でしょう?

あの歩き方を思い出してみると、ペンギン君ですね。それに、足も短いから、まちがいありません。

二番目は、とても大きなブタさんです。でも、ひと目でゾウさんの変装だということがわかります。長いハナをむすんで、短くしています。大きな耳は、たたんで小さくしています。大きなからだは、どうやっても小さくなりません。

つぎは、しまうまさんです。白と黒のしましまなのですが、くびが空に向かってなが〜くのびています。そうです。キリンさんですね。

ちょっと大きなタヌキ君もいます。フワフワのしっぽをつけて、目のまわりが黒くなっています。むねのところに、お月さまのもようがついています。それに、のっしのっしと歩くので、クマ君の変装だとわかりました。

今度は、チーター君が走ってきました。からだには、黒い水玉もようがいっぱい。動物の中で、いちばん足のはやいのがじまんです。でも、トコトコと走って、遅いようです。からだはコロコロとしています。あれっ、しっぽの変装をわすれているようです。短くて、クルッとまるまっています。このしっぽはブタ君ですね。走るのがおそいから、チーター君がうらやましかったのです。

うさぎさんが、ピョンピョンとやって来ました。おなかに、子どもうさぎちゃんをかかえています。おかあさんのおなかのふくろに入っているようです。でも、変ですね。うさぎさんにふくろはありませんよ。どうやら、カンガルーさんおやこのようです。

ドッドッドッと、地面をゆらしながら走って来る、大きな動物がいます。サイ君です。あたったらケガをしそうな、大きなツノを持っています。でも、この変装はすぐにバレてしまいました。サイ君は、あんまりあわてて走ったので、ドスンッところびました。その時、大きなツノがポロッととれてしまったのです。ツノがなければ、カバ君そのものです。いつもとなりのオリにいる、サイ君をマネしたのです。ツノをつけるだけだから簡単でいいやと思ったのです。

コンテストが終わりに近づいた時、誰かのさけび声がしました。

「キャーッ! ふんすいの池にサメがいる!」。

みんな大さわぎです。そっと近づくと、池の中からアシカ君が顔を出しました。背中にヒレをつけていたのです。アシカ君を見て、みんなホッとしたのか、大きな声で笑い出しました。

日がしずむころ、楽しかったパーティも終わりです。みんな自分のオリに帰って行きました。明日から、またみなさんとお会いできます。

えっ、コンテストの結果ですか? それは、みなさんが決めてください。

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2020年07月25日

創作童話『魔女は、ただいま勉強中!』

こんにちは。はじめまして。マジョールです。変わった名前でしょ。実は私、魔女の子どもなんです。信じてもらえないかもしれないけれど、ほんとです。

いままで魔女の国に住んでいたんですけど、一人前の魔女になるために、人間の世界にお勉強に来たんです。

人間は、魔法も使えないのに、幸せそうに暮らしているから、その方法をお勉強したいなと思ったんです。

ある日、空から子どもたちの様子を見ていたんです。校庭でドッジボールをしたり、おにごっこをしたり、花だんにお水をあげたり、とても楽しそうでした。

私は魔女だから、ボールをよけるのも簡単だし、空を飛べるから、おにをつかまえるのも早いし、お花に水がいるなら、雨を降らせることもできます。何だって、できちゃいます。

でも、みんなみたいに楽しくはありません。だから、楽しみ方を教えてもらおうと思いました。

私は、空き地に白い小さな家をつくりました。人間の世界の本を見て、それをマネしたんです。もちろん、魔法で。こんなことは簡単です。

学校にも通うことになりました。これが大変なんです。だって、歩いて行くんですよ。考えられない。いつもだったら、鳥にのせてもらったり、マントで飛んだり、ちょうちょに変身したりして、どこへでも行けるのに。歩くのは、とても時間がかかって、めんどうです。

学校で仲よくなったお友だちが、毎朝迎えに来てくれるようになり、いっしょに行きます。先生のことやいじめっこのことなんかを、ぺちゃくちゃおしゃべりしながら歩きます。

人間の女の子って、うわさ話がほんとに好きなんですよ。なんて言いながら、私もだんだん、そんな話が楽しくなってきました。

お友だちのひとりは、ときどき、道ばたに咲いている小さな小さな花を見つけては、何ていう名前の花だろうと、じっくりながめたりしています。よ〜く見ると、透き通るようにきれいな色で、とてもかわいい花だったりします。そんな時は、私も何か得をした気分になります。

草がいっぱい生えた空き地に立ち寄って、虫探しをすることもあります。

てんとう虫を見つけた時です。もうひとりのお友だちから、てんとう虫にはいろんな種類がいることを聞いて、びっくりしました。だって、どれもいっしょだと思っていたのに、黒くて丸い模様が7つあるものや、赤い点がいっぱいあるものがいるって言うんですもの。

カマキリの時だって、メスのカマキリがオスのカマキリを食べてしまうと言うんです。ある日、それを見た時は信じられませんでした。

学校に着くまでに、いろんなことを勉強します。どこへ行くにも空を飛んでいた頃には、こんなことには気づきませんでした。

あっちこっち寄り道するので、ときどき遅刻しそうになって、あわてて走り出すこともあります。

授業の時にも、いろんなことを発見します。そろばんなんていう、古い計算の道具を使って、足し算をするんです。

私たち魔女は、物を買うこともないので、計算なんてしません。どうしても必要な時は、計算機に魔法をかけて、勝手に計算させています。

なんて面倒なことをするんだろうと思いました。私は、もちろん魔法を使いましたが、みんなはいっしょうけんめいにパチパチしています。

先生が、わかった人いますか?と聞くと、大きな声でハイと言って、手をあげています。答えが違っていると、くやしそうな、かなしいような顔をします。

答えがあっていて、先生にほめられると、うれしそうに笑って、みんなから拍手をもらうのです。まるでヒーローのようです。その顔がほんとにうれしそうでニコニコしているから、私までうれしい気分になってしまいます。何だか不思議です。

人間て、いろんなことに感動して、よろこぶんだなと思いました。私たち魔女は、何だってできるから、ほんとにうれしいことなんて、めったにありません。そんなことに気がつきました。

人間は不便だけど、楽しいことがいっぱいあります。

私もこれからは、ドッジボールを魔法でよけないようにします。おにごっこだって、飛ばずに自分の足で走ります。花だんにも、水道からくんで来たお水をあげます。

何だか楽しそうだから、私はしばらく魔法を使わないで、この世界で暮らしてみようと思います。

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2020年07月11日

創作童話『はんたい世界へのトンネル』

けんちゃんは、学校から帰ると、バタバタとおうちを飛び出していきます。となり町にある大きな公園にいくためです。そこには、お気に入りのすべり台があるからです。

そのすべり台は、とても長くて、途中にトンネルがあります。中は暗くて、ちょっぴりこわいのです。けんちゃんは、その“ちょっぴりこわい”が好きなのです。

おばけでも出てくるような暗さです。けんちゃんは、何度も何度もすべります。

きょうは、新しいすべり方にちょうせんしようと思っています。ねころんで、頭からすべろうというのです。これには、ゆうきがいります。

「いち、にの、さぁ〜ん!」。

ジェットコースターみたいです。トンネルに入ったら、けんちゃんはこわくなって、目をつぶってしまいました。

ドッス〜ン! けんちゃんは、下の砂場にむねから落ちました。からだは砂だらけ。でも、おもしろかった。

もう一度やってみようと思って立ち上がると、まわりのようすが何だか変です。誰もいません。さっきまで、たくさんの子どもたちがいたのに。

ちょっと不安になって、公園を出てみると、けんちゃんはしんぞうがドキドキッとしました。

なんと、人間のおとなより大きなネコが、2本足で歩いているのです。それもたくさんいます。服も着ています。

けんちゃんが、おどろきのあまりじっと立っていると、いっぴきのネコが近づいてきて、しゃべり出しました。

「ネコがしゃべった。おばけだ!」。

けんちゃんは、にげ出そうとしたのですが、ビックリして足が動きませんでした。ネコは、こんなことを言っています。

「おかあさん。まだこどもの人間だよ。服も着ているし、どこかでかわれているんだね」。

うしろには大きなネコがいて、「人間は服なんて着なくていいのに。ほら、お手は」と言って、けんちゃんの前に手をひろげて出しました。

まったくぎゃくです。人間が犬にやっていることを、ネコが人間にしているのですから。

「おかあさん。この人間、お手しないね。教えてもらっていないのかなぁ」。

「そうねぇ。でも、かわいい人間ね。早くおうちに帰りなさい。かいぬしが心配しているわよ」。

けんちゃんは、さけびました。

「ぼくは人間だ。ネコよりえらいんだぞ」。

おかあさんネコはビックリしたようです。

「とつぜんほえたわね、この人間。何もしていないのに。かまれるといけないから、ほっといて帰りましょうね」。

子どもネコをつれて、どこかへいってしまいました。どうやら、ネコの言葉はけんちゃんにわかっても、けんちゃんの言葉はネコにはわからないようです。

けんちゃんは、いっぱいのネコの中をこわごわとおうちに向かって歩き出しました。途中で、大きな犬も見かけました。やっぱり服を着て、2本足で歩いています。

けんちゃんは、学校の服を着たネコに「わぁ、かわいい」と言われて、なでられました。不安で不安で、泣き出しそうでした。

やっとおうちに帰って、げんかんから中に入ろうとすると、中から犬が出てきました。犬もビックリしたようです。そして、おこったようにしゃべり出しました。

「けんじ、どこにいってたんだよ。心配して、さがしてたんだぞ。わるい犬につれていかれたら、どうするんだ」。

その犬をよ〜く見ると、けんちゃんのおうちでかっているシロだったのです。シロが自分と同じぐらいの大きさになっているのです。

「シロ、ぼくの言葉がわかるかい」と言っても、シロにはわからないようです。

「よしよし、もういいよ。早く人間ごやに入るんだ」と言うだけでした。

にわにいってみると、「けんじ」という名札のかかった、小さなおうちがあったのです。

どうして、こうなったのか。けんちゃんは、いっしょうけんめいに考えました。

「あのすべり台だ。トンネルをとおってからおかしくなったんだ。もう一回、あのすべり台をすべれば、もとにもどれる」。

けんちゃんは、公園にもどると、いちもくさんにすべり台をかけのぼりました。スルスルスルッ。けんちゃんは、トンネルをくぐりました。砂場にドンッと落ちましたが、あたりのようすは変わっていないようです。何度もすべりましたが、やっぱりだめです。

けんちゃんは、思い出しました。さかさまになって、頭からすべったことを。

今度は、ねころんで、さかさまにすべり出しました。トンネルの中はやっぱり暗くて、頭からすべると、さらにこわいのです。前と同じように、目をつぶってしまいました。

ドッス〜ン! むねから落っこちました。

けんちゃんは、ゆっくりと目をあけました。まわりを見ると、人間の子どもたちがいつものように、にぎやかに遊んでいました。人間の世界にもどってきたのです。

けんちゃんは、いそいでおうちに帰りました。にわを見ると、「シロ」という名札のかかった犬ごやで、シロがねむっていました。

けんちゃんは、考えました。どうぶつをかわいがらないと、いまにきっと、人間の世界がなくなってしまう。人間がネコや犬のペットにされてしまう。シロも大切にしなくちゃ。

それからけんちゃんは、二度とすべり台を頭からすべったりしませんでした。

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2020年06月27日

創作童話『宇宙探検隊おまる号』

「3、2、1、はっしゃ!」

宇宙をめざして、探検隊おまる号は飛び立ちました。隊長は、あつしくんです。みんなからは、あっくんと呼ばれています。

あっくんをのせたおまる号は、どんどん空へのぼっていきます。あっくんのおうちが小さく小さくなっていきます。町も小さくなり、ついには、地球も小さくなってきました。あっくんは、キラキラかがやくお星さまの中を飛んでいます。

お星さまはキャンディーみたいで、なんだかとってもおいしそう。あっくんは、ひとつとってなめてみました。それがとてもあまいので、パクッとお口の中に入れて、ゆっくりなめようとしたら、すぐにとけてなくなってしまいました。

あっくんは、またお星さまをとって、お口の中へ。やっぱり、すぐにとけてしまいました。でも、お星さまはあまくておいしいので、ふくろにいっぱいつめて、持っていくことにしました。

あっくんは、宇宙を探検するためにやってきました。どんなお星さまがあるのかな? 宇宙人にあえるのかな? ワクワクドキドキ。

しばらく飛んでいると、大きなふわふわしたお星さまがありました。「あのお星さまにちゃくりくだ」。あっくんは、おまる号からおりて、星を探検してみることにしました。

この星のじめんは、まるでトランポリンみたいに飛べるのです。ピョ〜ンと飛んでみると、遠くのほうまで見えます。

ピョンピョン飛んでいると、何かがやってくるのが見えました。だんだん大きくなってきます。なんだか、クマに似ています。

「ぼくはあっくんです。君はだれ?」
「ぼくはクマ星人です。ようこそ、クマ星へ」

「ここには、たくさんクマさんがいるの?」
「クマじゃありません。クマ星人です。なかまはたくさんいます。でも、いまはぼくひとりです」

「ほかのクマさんは、どこにいるの?」
「クマじゃありません。なかまは、まだ寝ています」

「君はどうしておきているの?」
「ぼくは、宇宙探検に行こうと思って、早おきしたんです」

「じゃあ、ぼくとおんなじだ。いっしょに行こうよ。おまる号のうしろにのればいいよ。おいしいお星さまもいっぱいあるから」
「えっ、お星さまを食べるんですか?」
「あまくておいしいよ。ひとつあげるから、さあ、のってよ」

「しゅっぱつ!」。あっくんとクマ星人をのせたおまる号は、クマ星を飛び立ちました。

前のほうから、お星さまのようにしろく光っている、とてもきれいなハクチョウが飛んできました。あまりにきれいなので、あっくんたちは、ボーッと見ていました。

しばらくすると、こんどはウシがのっしのっしとやってきました。すごく大きくて、ふみつぶされそうなくらいです。

ウシをよけたら、こんどはあっくんたちをめがけて走ってくるライオンがいました。大きな口をあけて、食べられそうです。あっくんたちは、大いそぎでにげました。

その他にも、うさぎやあひる、ねずみにも出会いました。宇宙には、いろんないきものがいることをあっくんは知りました。

おまる号はどんどん進んでいきます。とちゅうでおなかがすいたので、クマ星人とお星さまを食べることにしました。

どこかの大きな星におりようと思って見わたすと、四角くて平らな星が見えました。そこにちゃくりくすることにしました。

あっくんとクマ星人がパクパクとお星さまを食べているとき、それをねらっているねこのようないきものがいました。

そのねこのようないきものは、あっくんがよそみしているあいだに、お星さまの入ったふくろをサッと取ってにげてしまいました。

「あっ、まて! ぼくらのお星さまをかえせ!」

あっくんたちは、いそいでおまる号にのって、ねこのようないきものを追いかけました。ぐんぐん追いついて、よ〜く見ると、そのねこのようないきものは、あっくんのおうちでかっているタロウでした。

「なんだ、タロウも宇宙探検にきてたのか」

やっと追いついて、つかまえようとすると、タロウは大あばれです。あっくんもクマ星人も、ひっかかれてしまいました。お星さまをかえしてほしいのに、なかなかつかまえることができません。

あっくんたちがこまっていると、目の前にあらわれた大きな宇宙人が、タロウをつかまえてくれました。

「あっ、ママ星人だ。にげろ!」

あっくんは、クマ星人をだいて、そとに飛び出していきました。

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2020年06月14日

創作童話『さるかにじゃんけん』

かにさんは、おにぎりを持って遊びに行きました。さるくんは、何も持たずに遊びに行きました。道でかにさんに出会ったさるくんは、かにさんの持っているおにぎりがほしくなり、こう言いました。

「かにさん、かにさん。そのおにぎりをぼくにくれたら、きっといいことがあるよ」。

さるくんは、かにさんをだまそうとしましたが、かにさんは、
「いいことってなに? ちゃんとおしえて」。

さるくんは、
「すごくいいことだよ。おにぎりをくれたら、おしえてあげる」
と言いましたが、かにさんは、
「うそだ。おにぎりはあげない」
と言って、遊びに行こうとしました。

さるくんは、あわてて、おにぎりとかえっこするものが落ちていないか、まわりをさがしました。すると、道のはしに、カキのたねが落ちていました。

しめしめ、これとおにぎりをかえてやろう。さるくんはそう考えて、かにさんを追いかけました。

「かにさん、かにさん。これとおにぎりをかえっこしよう」。

さるくんがそう言うと、かにさんは、
「いやだよ。そんなもの食べられないもの」。

さるくんは、あきらめません。口のうまいさるくんは、
「おにぎりは食べてしまえばなくなるけど、カキのたねは土に植えとけば、カキの木になって、おいしいカキの実がいっぱいできるよ」。

かにさんは、それはいい考えだと思い、おにぎりとカキのたねをかえっこすることにしました。

さるくんは、おにぎりを手にすると、すぐにがぶりっと食べてしまいました。

かにさんは、カキの種を大事に持って帰って、土に植えました。そして、毎日毎日、せっせと水をやりました。

やがて芽が出て、大きな木になって、秋にはまっ赤なおいしそうなカキの実がなりました。

かにさんが、さあどれを食べようかなとまよっていると、そこにさるくんがやってきて、
「かにさん。ぼくとじゃんけんゲームをしようよ」。

「じゃんけんゲームって、どうするの?」
とかにさんが聞くと、
「じゃんけんをして、かにさんが勝ったら、ぼくが木にのぼって、カキを取ってきてあげるよ。かにさんは木にのぼれないだろ。もし、ぼくが勝ったら、カキを食べさせてよ」
とさるくんが言うと、かにさんは、自分が木にのぼれないことを思い出し、じゃんけんゲームをすることにしました。

じゃんけん、ぽんっ!

さるくんはグーを出し、かにさんはチョキを出しました。勝ったさるくんは、木にのぼって、カキをひとつ食べました。

また、じゃんけんをしました。かにさんは、またチョキを出しました。さるくんは、またグーで勝ちました。何回やっても同じです。さるくんばかり、カキを食べています。

かにさんは、泣き出してしまいました。
「さるくんはずるいよ。ぼくはチョキしか出せないのに」。

そう言いましたが、さるくんは、
「ゲームをしたかにさんが悪いんだよ。へっへっへっ」
と、にくらしそうに笑いました。

かにさんはおこり出し、さるくんめがけてとっしんしましたが、さるくんは身軽だから、ひょいひょいと木にのぼってしまいました。

「くやしかったら、のぼっておいで〜」
と、さるくんはかにさんをからかいながら、まだ赤くなっていない、かたいカキをかにさんに投げつけました。

かにさんは、あたったらたいへんだと思い、にげ出しました。

そのあとも、さるくんはカキを食べつづけ、おなかがいっぱいになって、木の上で眠ってしまいました。

泣きながらにげてきたかにさんのところへ、大きなはちさんがやってきて、やさしく聞きました。
「どうしたの、かにさん。なぜ泣いているの」。

かにさんは、悪いさるくんのことを話しました。大きなはちさんは、さるくんに腹が立ちました。
「私がさるくんをこらしめて、カキの木を取り返してあげましょう」
と言って、はちさんは飛んで行きました。

大きなはちさんは、カキの木で寝ているさるくんのところにそおっと近づいて、両手をチクリッとハリでさしました。

いたさでビックリしたさるくんが飛びおきたら、手がまっ赤になって、みるみるうちに大きくはれてきました。

「いたたたた。いたいよお。はちさんだな、こんなことをしたのは。どうしてだよ」
とさるくんが聞きましたが、はちさんは知らん顔して、飛んでいきました。

はちさんは、かにさんのところへもどってきて、
「さるくんをこらしめてきましたよ。カキの木に行ってごらんなさい。そして、またじゃんけんをしてみればいいわ。またね」
と言って、遠くへ飛んで行きました。

じゃんけんをしたって、また負けるだけだと思いましたが、やさしいはちさんの言うとおりにすることにしました。

カキの木にやってきたかにさんは、さるくんに言いました。
「さるくん、ぼくとじゃんけんしよう」。

さるくんは、手のいたいのも忘れて、またかにさんをからかってやれと思い、木をおりてきました。

じゃんけん、ぽんっ!

かにさんはやっぱりチョキしか出せません。でも、さるくんはパーを出しています。かにさんの勝ちです。さるくんは、しかたなくカキを取ってきてあげました。

じゃんけん、ぽんっ!

またまた、かにさんの勝ちです。どうしたことでしょう。何回やっても、かにさんの勝ち。今度はさるくんが泣き出しました。

「え〜ん、え〜ん。手がはれて、グーもチョキもだせないよ〜」。

そうです。はちさんにさされた手が大きくはれているのです。さるくんは、泣きながら走って行ってしまいました。

カキの木を取りかえしたかにさんは、なかまをよび、みんなで力をあわせて、カキの木にのぼりました。手のハサミでチョキチョキカキを取って、みんなで仲よく食べました。

それからは、さるくんがやってきても、みんなで木をかこんで、大切なカキをまもりました。

「カキの木に近づくと、ハサミでからだをちょんぎるぞ」
と言って、さるくんを追いはらいました。

posted by 遊酔 at 08:27| Comment(0) | 創作童話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月29日

創作童話『カバくんの小さな冒険』

「バフ、バフ、バフフ〜ン!」

動物園に住んでいる、カバのお母さんが、大きな声で鳴きました。いつもは、あまり鳴かないのですが、今日は特別な日だったのです。カバのお母さんが、こんな声を出す時は、赤ちゃんが生まれるのです。

小さくて、コロコロとした、カバの赤ちゃん。とても元気な男の子です。となりのさくにいる、サイのおじさんとおばさんも喜んでくれました。「カバさん、おめでとう。元気でたくましい子に育ってくれるといいねぇ」。

「どうも、ありがとうございます。きっと元気でワンパクな子になると思います」と、カバのお母さんはお礼を言いました。

お母さんが言ったとおり、カバくんは、毎日たくさんのおっぱいを飲んで、すくすく元気に育っていきました。からだもグングン大きくなり、さくの中を走りまわるようになりました。

それから何ヵ月かたった頃。カバくんは、いつものように走りまわっていました。でも、そろそろあきてきたのか、さくの外に出たくなってきました。さくの外はどうなっているんだろう。どんな動物が住んでいるんだろう。

カバくんから見えるのは、となりのサイさんと、人間という、たくさんの生き物くらいです。カバくんたちを見て、わらったり、声をかけたりするのが、不思議でしかたありませんでした。

カバくんは、そんな人間を見るのもあきてきました。それに、どうしてこんな小さな場所にずっといなくちゃいけないのか、わかりません。お母さんに聞いてみました。

「お父さんとお母さんは、アフリカという広くて自由な国に住んでいたんだけど、人間につかまって、ここにつれて来られたんだよ。人間の子どもたちが、世界中にどんな動物がいるのかを勉強するために、たくさんの動物を集めてきたんだよ。いろんな国から、いろんな動物がやって来ているのよ」。

カバくんには、よくわかりませんでした。どうして、つれて来なくちゃいけないの。見たければ、その国に行けばいいのに。もっと広いところで、もっと自由に走りまわりたい。その方が楽しいのに、とカバくんは考えていました。

でも、それよりも気になることがありました。世界中からやって来た、ほかの動物たちのことです。カバくんは、友だちがほしかったのです。お話したかったのです。

どうしたら、さくをぬけ出せるか、いっしょうけんめい考えました。でも、さくの前には大きなみぞがあって、外に出ようとすると、そこに落っこちてしまいます。カバくんは、外に出る方法を毎日毎日考えていました。

そんなある日、動物園がお休みの日でした。カバくんのさくにペンキをぬるおじさんがやって来ました。しばらくして、さくをぬり終わると、こんどはさくの前のみぞにハシゴをかけて、わたって来ました。そして、カバくんがいつも走っていたコンクリートの地面に、ペンキをぬりはじめました。

そのあいだカバくんたちは、おくにある小さな部屋に入れられました。カバくんは、オリのような小さなまどから、そのようすをじっと見ていました。おじさんは、ペンキをぬり終わると、ハシゴをわたって、かえって行きました。

「アッ!」と、カバくんは声をあげて、おどろきました。おじさんは、ハシゴをかけたまま、わすれて行ったのです。あのハシゴをわたれば、外に行けます。カバくんは、大よろこび。どうか、おじさんがかえって来ませんように。カバくんはいのりました。

部屋から出たカバくんは、ハシゴのところに来ました。でも、下を見ると、こわくてなかなかわたれません。勇気を出して、いっぽいっぽ、ゆっくりわたって行くことにしました。

でも、ハシゴはグラグラゆれるし、足はガタガタふるえるし、カバくんは汗をいっぱいかきました。やっとのことで、ハシゴをわたり終わったカバくん。さあ、どんな世界がまっているのでしょう。期待にむねをふくらませ、歩き出しました。

動物園には、春がやって来ていました。あたりには、さくらの木がいっぱい花を咲かせ、とてもきれいです。そんな中をカバくんは、トボトボ、キョロキョロ、歩いて行きました。とちゅうに坂道がありました。カバくんは、ゆっくり歩いていたのですが、何かにつまづいて……。

「わぁー、たすけてぇ〜」と、ゴロゴロ、ゴロゴロころがってしまいました。カバくんは、木にぶつかってやっと止まりました。じょうぶなからだなので、ケガはしませんでした。

そこには、オランウータンのオリがありました。カバくんが、息をハアハアさせていると、オランウータンのおじさんが、声をかけました。

「どうしたんだ、カバくん。こんなところまでやって来て。きみのおうちはむこうだろ」

「うん、そうだけど。ぼく、いろんな動物に会いたくて、外に出来たんだ。おじさんは誰なの?」

「わしは、オランウータンだよ。スマトラという国からやって来たんだ。といっても、知らないだろうがな。たくさんの木があるところで、その上でのんびり暮らしていたんだ。でも、いまはこんな小さなオリの中だよ」と、オランウータンのおじさんは、悲しそうに言いました。

そんな話をしていると、となりのオリで、キーキー鳴いてあばれだした動物がいました。オランウータンによく似ていますが、少し小さいようです。

「あなたは誰ですか?」と、カバくんが聞くと、「おれはチンパンジーだ。さっきから、何を話している。せっかく寝ていたのに、おこしやがって」と、とてもこわそうなおにいさんでした。カバくんは、すぐにそこをはなれました。

つぎにやって来たのは、プールみたいなところでした。カバくんのさくの中にもプールはありましたが、とてもよごれていて、小さかったので、このプールの広さにおどろきました。そこには、黒くて大きな魚のような動物が、気持ちよさそうに泳いでいました。

「ねえねえ、あなたは誰?」カバくんが聞くと、「私はアシカよ。あなたも泳がない?」と、返事がかえって来ました。

「気持ちよさそうですね。それに、プールが広くていいなぁ」。そうカバくんが言うと、アシカはおこったように、大きな声で言いました。

「どこが広いのよ。私の生まれたところは、もっともっと広くて、もっと深くて、もっときれいだったのよ。なのに。こんなせまいところに入れられて」。

カバくんは何も言えず、ごめんなさいとだけ言って、歩き出しました。

小さなオリがたくさんならんだところにやって来ました。そこでは、タヌキやアライグマが、元気なさそうに、ぼんやりしていました。カバくんは、その動物たちと少しずつお話をしました。

みんな悲しそうでした。たべものはたくさんあるけれど、小さなオリの中で、自由に走りまわることもできない。人間にジロジロ見られるのも、いやだったのです。

カバくんは、考えこんでしまいました。みんなが外に出て、遊べればいいのに。どうして、オリの中に入れるんだろう。カバくんも、なんだか悲しくなってきました。

そんなことを考えながら歩いていると、突然、とても大きな動物に出会いました。カバくんの何倍もある大きさです。からだは灰色で、とちゅうで折れた大きなキバを持っています。顔のまんなかに、なが〜いものがぶらさがっています。カバくんは、その動物に聞きました。

「そのなが〜いものは何ですか?」

すると、その大きな動物が、ゆっくり話しはじめました。

「これは、わしのはなだよ」

「えっ、どうしてそんなにながいの?」

「これは、水をのんだり、ものをつかんだり、とても便利なようにできているんだよ」

「へぇ、そうなの。ところで、おじさんは何ていう動物なの?」

「わしは、ゾウだよ。動物の中でいちばん大きいんだぞ」

カバくんは、話を聞きながら、ゾウさんの折れたキバを見ていました。

「どうして、キバが折れているの?」

「これは、折れたんじゃない。あぶないからといって、切られてしまったんだ。人間や仲間をキズつけるといけないからと言ってな」

そんな話を聞いていて、カバくんは人間に腹が立ってきました。

ゾウのさくの近くには、ぜんぜん動こうとしないゴリラや寝てるだけのトラ、ライオン。エサを食べるだけのフラミンゴなどがいました。

カバくんは、楽しそうに遊んでいる動物がどこかにいないか、探しまわりました。でも、いませんでした。

動物園の中をぜんぶ見て、とうとう出口まで来てしまいました。その外には、中とはぜんぜんちがう景色が広がっていました。四角くて背の高いものがいっぱいならび、その下では、まるい足を持った箱のような動物がすごく早く走っていました。人間もいます。中とは別の世界のようです。

好奇心いっぱいのカバくんは、外に出たくなりました。こんなせまいところをぬけ出して、広いところに行きたくなりました。カバくんは、思いきって出口に近づきました。するとその時、飼育係のおじさんに見つかってしまいました。カバくんはつかまって、また、さくの中に入れられました。

いつかきっと外に出ようと、カバくんは決心しました。もっと自由に遊べるように。

posted by 遊酔 at 08:19| Comment(0) | 創作童話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする